私たちのドーナツのこと

できれば怒らずに聞いてもらいたいんですけどね

今までたくさんのドーナツを作らせてもらってきたわけなんですけど
自分の中で、あの時のあのドーナツが一番上手にできた、いうのがあるんです。

それは今から2年以上も前に作ったドーナツ。

あの時のドーナツと今のドーナツの何が違うのかがわからなくて、ずっと試行錯誤をしてきました。
生地を作ってから、伸ばし始めるタイミングを変えてみたり、
伸ばしてから揚げるまでの時間を調整してみたり、
生地の混ぜ方や、油に入れるドーナツの個数を変えてみたり、思いつく限りの微調整をずっとしてきたわけなんですけど、
どうにもあの時のあのドーナツと同じものができなかったんです。

どうしたものかと行き詰まり悶々としていたその時にふと
あの時って今みたいに頭でいろいろ考えていなかった。何も考えずに作っていたことを思い出しました。
そう、意識的(思考)ではなく無意識(感覚)で作っていたんです。

そうとわかれば
あの時の感覚を思い出せばいいだけ。
やってみました。

あの時の
手に触れる生地の感覚。(結果、甘糀の水分量を調整しました)
生地を伸ばす時の感覚。(結果、生地を伸ばす時の打ち粉量を調整しました)
揚げ油の温度の感覚。(温度計に頼らず自分の感覚を頼りに)

無意識状態で作っていた時の感覚を呼び起こし作りながら、ひとつひとつの工程を注意深く記録していく作業。

それをやってみてわかったのは
このneiroドーナツは少々常識外れということでした。

その一番の理由は揚げ油の温度。
ドーナツを揚げる適温、揚げ物の適温ってあるんですけど、このドーナツはそれを越えていく。
結構な高温で、素早く揚げていく。
揚げものの常識があてはまらない。

生地も扱いにくいこのドーナツ。
さらに常識外れの温度で揚げるからこそ、あの時のあのドーナツの仕上がりになる。

ようやくそこにたどり着くことができました。




・いつも同じものを作りつづける
・たくさんの人に食べてもらえるように

このためにやってきたことが、少しづつ微妙なズレを生み、それが「ふくらみすぎたドーナツ」となってズレを教えてくれていたのではないかと思っています。

ふくらみすぎたドーナツはその名のとおり揚げている時にふくらみすぎたドーナツでドーナツを作り始めた頃にはなかったものができるようになってしまい、
なぜふくらみすぎるのか、この原因をずっと探っていましたが
感覚で作っていた時のドーナツの作り方を数字化し作っていくと、不思議とふくらみすぎたドーナツはひとつもできなくなったのです。

やっと自分たちのドーナツが完成した。
そう思いました。

neiroドーナツのドーナツは試作中に甘糀を入れる手が滑って入りすぎてしまいそのまま作ったら、ビックリするほどおいしいドーナツができた。だからこのドーナツは作らせてもらっている。神様からのプレゼント。
というのは、いろいろな所で話しているドーナツ誕生秘話ですが、
完成したドーナツを前に
『ようやく自分たちの手中にこのドーナツが収まった』というちょっと変な感覚になりました。
それは『私たちは作らせてもらっている』から『私たちが作っている』へと変わっていく感覚でもあり、
レシピは確かに偶然できたもので
神様からのプレゼントなんですけど
それをどうモノにしていくか
それは私たち次第だったんだと。



このドーナツを
これからさらに
たくさんの人に届けたい。

今年もたくさんの試みをしていきます。
お楽しみに◎


今までドーナツを食べてくれた方々ありがとうございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!